おすすめの映画or書籍②『グリーンブック』

最近『グリーンブック』という映画を見ました。
主人公は、NYの高級ナイトクラブに勤務していましたが、閉店の折に、トラブル対応力(要は喧嘩騒ぎに活躍する腕っぷし)が買われ、有名な黒人男性ピアニストのSPとしてアメリカ南部へのツアーに同行する仕事が舞い込みます。
主人公は黒人への負の感情を隠し切れないまま、生活のために同行を決心し、物語が進んでいきます。
主人公はイタリア系の労働者階級です。他の欧州系移民と比べ、差別を受けやすい歴史がありました。
隠し切れない満たされなさから、激しい性格ですぐ暴力に頼るところ以外は、家庭を持ち、家族は守る保守的な男性です。
対して、主人公が護衛する黒人ピアニストは、高い音楽教育を受け、そのまま成功した裕福な人物です。
表面的には教養と理性から非常に穏やかでスマートな振る舞いをしますが、同性を愛するが故、女性との結婚はうまくいかず、孤独を自負する人物です。
立場と社会性は真逆な2人ですが、共にアイデンティティに関し複雑な感情を抱えています。
単なるロードムービーでなく、当時の異常な社会、2人の心の成長と美しい友情が描かれている後味の良い映画です。

差別問題といえば、インドのカースト制度を連想される方も多いのではないでしょうか。(極めて良くない言葉ですが、'スクールカースト'’ママカースト'なんて言葉で一般化している気がします)
独立後も依然社会に残っていることで有名ですが、1983-2004年におけるアメリカにおける黒人と白人の賃金格差の是正は、同時期のインドにおける被差別カーストと上位カーストの賃金格差の是正よりも進んでいなかったようです。 (注1)昨今のアメリカを見ていても、差別問題がグリーンブックで描かれている時代から大きく進歩したようには見えません。
グリーンブックは、感動と共に、とても考えさせられる映画でもありました。
(注1:156P, アビジット・V・バナジーとエステル・デュロフ共著『絶望を希望に変える経済学』)